WACCの資本コストとは?機会費用である。
1.資本コストがなぜ現金の支出を伴う費用ではなく、機会費用なのか
1.1 定義
「資本コストは機会費用である」
機会費用は投資家が同水準のリスクでほかの投資機会に資金を投じて得られるであろうものに基づくのである。
1.2 理由および考え方
投資家目線で考える株主資本コストであるため。
株主資本コストは幅広い企業ポートフォリオに投資家が投資することで得られたリターンのこと。投資家はポートフォリオ分散できるので企業の資本コストは属する業界によって大部分が決まっている。
1.3 実際の割引率はどの程度になっているか。
現実世界(ポートフォリオが組める前提がある前提)のリスクに応じた割引率を考える。
リスクに応じて割引率は変えていかなければいけない。ここでいうリスクとは結果(収益)のばらつきである。しかし、S&Pにある企業内でも収入が安定している企業と安定していない企業の資本コストはさほどかわらない。WACCはおおよそ7~9%で収まっていることが多かった(2019年)、ここから導かれることは分散不可能なリスクだけが資本コストに影響を与えることを意味する。
1.4 投資家にとって考慮すべきリスク(結果のばらつき)は何か。
要は投資家は分散投資しているので、分散不可能なリスクに対してのみリターンを求めるということ。
分散不可能なリスクとは景気循環などのことである。よく言われる言葉ではシステマチックである。
ここで疑問となる、個別企業のリスクってそんなに重要じゃないのという疑問である。
2.個別企業の結果のばらつきは何を見るべきか。
WACCとROICを理解することにつながると考える。WACCは多くの企業で1~2%の違いであるのに対して各企業のROICは数%から数十%とばらついている。どちらに注目して分析するべきか。キャッシュフローの視点を大事にしたいのではないか。
2.1 企業価値の分子と分母で考えること
分子側で企業がもつキャッシュフローのばらつきについて成長率、外部環境に応じたシナリオをいくつか準備しておき、そのシナリオにもとづいて資本コストで評価することが重要である。
投資家にとっては分散投資しているので資本コストは十分にリスクをさげており、そのポートフォリオでの期待リターンはそのひとつの企業の結果のばらつきの大きさではかわらない。であるならばある企業の企業価値を考えるべきときには分子のキャッシュ・フローで考慮しておくという理解である。
<参考>企業価値評価(上)
以上